口内炎が心配になったら

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曖昧な知識で民間療法に頼ると痛い目に遇うよ!

堀ちえみさんの舌ガンが報道されて以来、毎月かならずと言ってよいほど口内炎の患者が受診するようになりました。みなさん、口腔がんを心配してのこと。今回は、口腔がんとの鑑別法に加え、口内炎の予防と治療正しい知識について語ります。

口内炎の原因

 ひとくちに口内炎と言っても、その原因によっては症状も対処法も異なります。場合によっては正しくない民間療法でもって、さらに痛い思いをするなんてことも散見されます。ご自分の症状が次のどれに該当するかを見極めて対処していただきたいのですが、なかなか難しいので、あーだこーだ言っているうちに歯医者への受診をお勧めします。

単純性口内炎

 ぶつけたり、噛んだり、火傷をしたあとにできるもので、一般のみなさんは、これを口内炎とは思わないかもしれません。怪我や火傷がきっかけですので、素人さんでも「ああ、あれが原因か」と思い当たるでしょう。傷と同じですから、放置しておいても自然に治ってきます。これは、あまり問題ないとして……

アフタ性口内炎

 いわゆる口内炎としての世間一般の認識は、ここからだと思います。肉体的・精神的ストレスや寝不足、偏食によるビタミン不足で発生します。
境界が明瞭な白っぽい楕円形のくぼみの周辺に赤みが広がっており、触れるととても痛い。辛いものは言うまでもありませんが、味の濃い食べ物はすべて刺激になります。放っておいても1~2週間ほどで自然治癒しますが、その間はずっと痛みが続きますので早い対処が必要です。
 原因が原因だけに再発を繰り返す場合がほとんどで、数個できることがあります。
   大人が口内炎で受診するのは、ほとんどの場合これであると考えられます。 

ウイルス性口内炎

 特に有名なのがヘルペスウイルスですが、夏風邪の原因にもなるヘルパンギーナや手足口病の原因、コクサッキーウイルスが有名です。
ヘルペスは乳幼児に多く見られ40℃近い高熱と歯ぐきの腫れ、発赤が見られますので小児科で発見されることも少なくありません。
 ヘルパンギーナや手足口病は主に夏期に見られます。前者は口~喉にかけて多くの水泡を形成し、後者は病名のとおり手、足、口に水泡を生じますので判別と容易です。いずれも高熱が出ますので、歯医者よりはまず小児科ということになりましょうか。

その他の口内炎

 抵抗力が弱い乳児、手入れの悪い入れ歯を装着している高齢者のお口に、拭ってもきれない白い膜状のカンジダ性口内炎が発生する場合があります。小児科の他には歯科口腔外科での処置をお勧めします。他にも抗菌剤によって起こるもの、金属アレルギーによるものがありますが、ここでは語りません

治療

ご家庭でできること

 治しているのは歯医者でも小児科医でもなく、ご自身のからだです。特にアフタ性口内炎の場合、肉体的精神的休養……ありていに言えばストレス軽減と十分な休息、睡眠……そんなこと出来れば苦労はないよ! という声が聞こえてきそうですが、過去を振り返ってクヨクヨせず、先のことを考えて絶望せず、と言ったところでしょうか。お笑い番組や好きなコミックをみる、野山で身体を動かすなど、個人にあったストレス解消法を試してください。アロマテラピーや半身浴なども案外、効果があるようです。むろん、精神的・時間的余裕は必要です。

食事での注意

 辛いもの、味の濃いものを避けるのは前述のとおりです。この他に氷点下の食物……アイスクリームやかき氷も刺激になります。冷たいジュースは飲んでもかまいませんが、コップに浮かべた氷は口にしないように。またポテトチップスや硬いせんべいなど、かみ砕くと鋭い破片になるものも避けた方が無難でしょう。
 アルコールは……個人的にはOK だと考えています。なぜならばストレス解消のために飲むのでしたらアフタ性口内炎には効果的だと考えられますので。

 この他に、殺菌効果を狙って梅干しや赤シソの葉を貼る、刺激を受けないようハチミツを塗るというのもありますが、試したことはありません。
※注 ハチミツには微量のボツリヌス菌が存在している場合があり、抵抗力のない乳幼児には絶対にあたえてはいけません!

歯科診療所へ行きましょう

 放っておいても治る口内炎ですが、二週間も痛みを感じるのは生活の質が落ちるというものです。お年寄りのなかには「口内炎は焼いて治す」と勘違いなさっている方がおられます。熱したスプーンを押し当てるなんて荒療治をしている人の話を耳にしましたが百害あって一利なしです。歯医者のなかにも虫歯の進行止め(サホライド)を塗るという先生がおられますけど、これも意味がない。進行止めは化学的に「焼く」のと同じ行為ですので、めっちゃ痛い。つまり口内炎を焼くのは、一時的に感じなくなるだけで新たに火傷をすることになります。
 では正しくはどうするか。まず患部を清潔に保つことが必要です。口内炎の中心部は潰瘍になっていますから雑菌に晒されやすい。清潔に保つことで炎症が広がるのを防ぐことができます。
次に、歯科医院で処方される塗り薬を使ってください。トリアムシノロンアセトナイド、デキサメタゾンなど数種類の薬剤がありますが、どれを選んでも間違いありません。

口内炎の薬の塗り方

 チューブに入った軟膏を処方される事がほとんどです。
 使い方は、一カ所につきマッチの頭程度の量が目安。これを箸や綿棒の先につけておきます。
次に患部をガーゼやティッシュを使って唾液を軽く拭き取っておきます。強くこすると痛いので、そっと押さえる感じで。
 そこにすかさず、準備しておいた軟膏を乗せます。患部に押しつけたら心の中でゆっくり「10」数えてください。こうすることで、患部に軟膏の膜ができて、機械的刺激も緩和できるのです。
 塗る回数ですが……薬剤師さんは「一日数回」と説明しているようですが、私は食事の前後にどうぞ、と言っております。食事の前に塗って、患部に軟膏の皮膜を作って食べやすくし、食事が済んだら流れてしまった軟膏を足しておく、ということです。

口腔がんとの見分け方 

  • 詳しくは別項、口腔がんかな?と思ったらをご覧いただきたいのですが、ここでも簡単に述べてみます。
    好発年齢はだいたい60歳以上。
    ですから堀ちえみさんは、舌がんになるには比較的若いと言えます。だけど次のいくつかの要件に該当していたのかもしれません。
  • ヘビースモーカー、大酒飲み
    身体の表面にできる「がん」(偏平上皮がん)は炎症が長く持続することによって発生します。タバコや強いアルコールが粘膜を刺激し続けるのは、あまりよろしいことではありません。舌がんはもとより、歯肉がん、頬粘膜がん、口腔底がんなど、口にできるがんのいずれも、このふたつが大きな原因になります。
  • 虫歯を放置している 不適合な入れ歯を入れている
    歯であれ入れ歯であれ、ギザギザした箇所が舌や頬をこすれば、傷の治るいとまがございません。怪我による炎症の持続は、飲酒、喫煙と並ぶ口腔がんの原因です
  • お口の中を不潔にしている
    堀ちえみさんは、舌がんの他に初期の食道がんも告知されました。歯周病菌とアルコールが共存する場合、アルデヒドという化学物質が発生してこれが粘膜を刺激⇒がんの原因になることがわかってきました。特に、お酒を飲むと顔が赤くなる人は、アルコールの分解能力に難がありリスクは高めになります。
  • 口が渇きやすい
    ウナギやドジョウにはウロコはありません(実際には目に見えないほど小さいだけ)。なのに身体が傷つかないのは、表面がヌルヌルした粘液で覆われているから。人間の唾液にも、ウナギやドジョウとほぼ同じヌルヌル成分が含まれております。したがいまして、このヌルヌル……主に舌の裏側から出る唾液が減少すると、舌を含めた口腔粘膜が傷つきやすくなります。
    加齢による唾液腺の萎縮、ストレスなどが原因で唾液の分泌量が減ってまいります。
  • しばらく歯医者に行っていない
    もうね、とにかく心配でしたら、一度ご来院ください。以上!